労働関連・取引関連法規(全26問中3問目)
No.3解説へ
ソフトウェア開発を,下請法の対象となる下請事業者に委託する場合,下請法に照らして,禁止されている行為はどれか。
出典:令和5年春期 問78
- 継続的な取引が行われているので,支払条件,支払期日などを記載した書面をあらかじめ交付し,個々の発注書面にはその事項の記載を省略する。
- 顧客の求める仕様が確定していなかったので,発注の際に,下請事業者に仕様が未記載の書面を交付し,仕様が確定した時点では,内容を書面ではなく口頭で伝える。
- 顧客の都合で仕様変更の必要が生じたので,下請事業者と協議の上,発生する費用の増加分を下請代金に加算することによって仕様変更に応じてもらう。
- 振込手数料を下請事業者が負担する旨を発注前に書面で合意したので,親事業者が負担した実費の範囲内で振込手数料を差し引いて下請代金を支払う。
正解 イ問題へ
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解説
下請法(下請代金支払遅延等防止法)は、事業者による下請事業者に対する優越的地位の乱用行為を取り締まる法律です。下請法では、下請事業者に製造委託等をした親事業者に対し、①下請事業者の給付内容、②下請代金の額、③支払期日、④支払方法等を記載した発注書面を直ちに交付することを義務付けています。
- 基本的には製造委託等の都度、発注内容を記載した所定の書面を交付する必要がありますが、一定期間共通である事項をあらかじめ書面で下請事業者に通知している場合には、それらの事項は個々の発注書面に記載しなくても良いとされています。よって、継続的な取引の中で共通事項となる支払条件、支払期日等は事前に書面で通知しておき、個々の書面ではそれらの記載を省略することが可能です。
- 正しい。仕様確定後の通知を「口頭」でしている点が禁止行為に該当します。
交付する発注書面には、下請事業者の給付内容として、その品目、品種、数量、規格、仕様等を明確に記載する必要があります。ただし、給付内容が定まっていないことにつき正当な理由がある場合には、発注書にはその旨と理由・定める予定期日を記載しておき、内容が定められた後直ちに書面で通知をすることが認められています。 - 一方的に仕様変更を命じ、親事業者がその費用を負担しない行為は、不当な給付内容の変更として禁止されますが、協議を行い、増加費用を支払うことを約束した上で委託内容を変更することは問題ありません。
- 合意なく振込手数料を負担させる行為は下請代金の減額として禁止されますが、合意の上で下請代金の額から振込手数料相当額を差し引くことは問題ありません。
- 受領拒否
- 下請事業者に帰責事由がないのに、注文した物品等の受領を拒むこと
- 下請代金の支払遅延
- 下請代金を受領後60日以内の定められた支払期日までに支払わないこと
- 下請代金の減額
- 下請事業者に帰責事由がないのに、あらかじめ定めた下請代金を減額すること
- 返品
- 下請事業者に帰責事由がないのに、受け取った物を返品すること
- 買いたたき
- 類似品等の価格または市価に比べて著しく低い下請代金を不当に定めること
- 購入・利用強制
- 親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させること
- 報復措置
- 下請事業者が親事業者の不公正な行為を公正取引委員会または中小企業庁に知らせたことを理由として、取引数量の削減・取引停止等の不利益な取扱いをすること
- 有償支給原材料等の対価の早期決済
- 有償で支給した原材料等の対価を、当該原材料等を用いた給付に係る下請代金の支払期日より早い時期に相殺したり支払わせたりすること
- 割引困難な手形の交付
- 一般の金融機関で割引を受けることが困難であると認められる手形を交付すること
- 不当な経済上の利益の提供要請
- 下請事業者に金銭、労務の提供等をさせること
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直し
- 下請事業者に帰責事由がないのに、費用を負担せずに注文内容を変更し、または受領後にやり直しをさせること
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