平成27年秋期試験午後問題 問10
問10 サービスマネジメント
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サーバ仮想環境における運用管理に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。
サーバ仮想環境における運用管理に関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。
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E社は,製造業を営む中堅企業である。E社の情報処理システムは,総務,人事,販売管理,生産管理などの各業務システムが稼働する複数のサーバと社内ネットワーク基盤から構成されており,E社の情報システム部が,この情報処理システムの運用管理を担当している。
E社では,今後3年間のシステム改善計画に基づき,情報処理システムを集約することによって費用の適正化を図ることにした。具体的には,これまで業務システムごとに1台以上の業務サーバが割り当てられていた稼働環境を,サーバ仮想化技術を適用して3台の物理サーバに統合することにし,現在,サーバ仮想環境に順次移行中である。
業務システムには,稼働停止が許されない業務上の重要性が高いシステム(販売管理及び生産管理)と,それ以外の数日間程度の停止であれば許されるシステムがあるので,それぞれの業務システムの可用性の要求水準に配慮してサーバ仮想環境への移行の作業方式と作業日数を設定した。これまでに10台の業務サーバをサーバ仮想環境の物理サーバに統合した。
3台の物理サーバは業務サーバと同じ社内LANに配置されている。3台の物理サーバに配置されているサーバ仮想環境のシステム構成を図1に,各仮想サーバのシステム資源(以下,リソースという)の割当てを表1にそれぞれ示す。 各業務システムにおける仮想サーバの台数や仮想サーバに割り当てたリソース使用量(以下,リソース値という)は,システムの稼働に必要な最小値であり,リソース値が最小値未満となった場合は業務システムが稼働できなくなる。
物理サーバ SV01~03 が割当て可能な最大のリソース値は,それぞれvCPU数が8,メモリ容量が64Gバイトである。このサーバ仮想環境では,最大のリソース値を超えた割当てはできない。
このサーバ仮想環境では,運用担当者の操作によって,稼働している物理サーバから他の物理サーバに仮想サーバを移動することができる。物理サーバに障害が発生した場合は,仮想サーバの移動機能が自動的に働いて,あらかじめ設定された別の物理サーバへ移動する。ただし,移動しようとした先の物理サーバで必要なvCPU数及びメモリ容量が割当てできない場合には,移動は行われない。
〔サーバ移行の計画立案〕
サーバ移行の計画立案を担当する情報システム部の運用担当者のF君は,次回の移行対象となる業務システムのサーバ仮想環境への移行計画を検討している。
対象の業務システム:在庫管理システム
現行の業務サーバ台数:2台
また,E社の在庫管理システムの稼働特性は次のとおりである。
F君は,在庫管理システムのデータ量は事業規模に比例すると想定し,E社の今後3年間の事業計画を基に,必要となるリソース使用量は毎年2%ずつ増えると見込んだ。
F君は,これらの状況を考慮して,移行先の物理サーバに必要なリソース値を見積もった。見積もったリソース値を表2に示す。また,在庫管理システムの仮想サーバを VM11,12 として,VM11,12 の配置先を物理サーバ SV02 とし,障害が発生した場合の自動移動先を物理サーバ SV03 とした。 F君は在庫管理システムのサーバ仮想環境への移行計画書を作成し,上司のG部長に報告した。
〔移行計画書の見直し〕
移行計画書を見たG部長は,①仮想サーバの配置先に不備があるので,配置先を見直すように指示した。また,②物理サーバ SV01~03 における仮想サーバの配置方法については検討が不十分であるので,更に検討するように指示した。
G部長は,物理サーバに障害が発生したとき,それまで稼働していた全ての仮想サーバを別の物理サーバに移動させようとしても,移動できない仮想サーバが発生することに気づいた。現行では物理サーバの割当て可能な最大のリソース値をすぐに増やすことができないので,当面の対応として,移動させる仮想サーバについて,③業務特性に応じた制限を加える必要があると考えた。その制限についても検討するように指示をした。
指示を受けたF君は,指摘事項を反映した移行計画書を作成し,G部長に報告した。
E社では,今後3年間のシステム改善計画に基づき,情報処理システムを集約することによって費用の適正化を図ることにした。具体的には,これまで業務システムごとに1台以上の業務サーバが割り当てられていた稼働環境を,サーバ仮想化技術を適用して3台の物理サーバに統合することにし,現在,サーバ仮想環境に順次移行中である。
業務システムには,稼働停止が許されない業務上の重要性が高いシステム(販売管理及び生産管理)と,それ以外の数日間程度の停止であれば許されるシステムがあるので,それぞれの業務システムの可用性の要求水準に配慮してサーバ仮想環境への移行の作業方式と作業日数を設定した。これまでに10台の業務サーバをサーバ仮想環境の物理サーバに統合した。
3台の物理サーバは業務サーバと同じ社内LANに配置されている。3台の物理サーバに配置されているサーバ仮想環境のシステム構成を図1に,各仮想サーバのシステム資源(以下,リソースという)の割当てを表1にそれぞれ示す。 各業務システムにおける仮想サーバの台数や仮想サーバに割り当てたリソース使用量(以下,リソース値という)は,システムの稼働に必要な最小値であり,リソース値が最小値未満となった場合は業務システムが稼働できなくなる。
物理サーバ SV01~03 が割当て可能な最大のリソース値は,それぞれvCPU数が8,メモリ容量が64Gバイトである。このサーバ仮想環境では,最大のリソース値を超えた割当てはできない。
このサーバ仮想環境では,運用担当者の操作によって,稼働している物理サーバから他の物理サーバに仮想サーバを移動することができる。物理サーバに障害が発生した場合は,仮想サーバの移動機能が自動的に働いて,あらかじめ設定された別の物理サーバへ移動する。ただし,移動しようとした先の物理サーバで必要なvCPU数及びメモリ容量が割当てできない場合には,移動は行われない。
〔サーバ移行の計画立案〕
サーバ移行の計画立案を担当する情報システム部の運用担当者のF君は,次回の移行対象となる業務システムのサーバ仮想環境への移行計画を検討している。
対象の業務システム:在庫管理システム
現行の業務サーバ台数:2台
また,E社の在庫管理システムの稼働特性は次のとおりである。
- 毎月最終週に業務ピーク日を迎える。
- 年間を通じて業務ピーク月である6月の処理量が他の月と比べて多くなる傾向がある。
F君は,在庫管理システムのデータ量は事業規模に比例すると想定し,E社の今後3年間の事業計画を基に,必要となるリソース使用量は毎年2%ずつ増えると見込んだ。
F君は,これらの状況を考慮して,移行先の物理サーバに必要なリソース値を見積もった。見積もったリソース値を表2に示す。また,在庫管理システムの仮想サーバを VM11,12 として,VM11,12 の配置先を物理サーバ SV02 とし,障害が発生した場合の自動移動先を物理サーバ SV03 とした。 F君は在庫管理システムのサーバ仮想環境への移行計画書を作成し,上司のG部長に報告した。
〔移行計画書の見直し〕
移行計画書を見たG部長は,①仮想サーバの配置先に不備があるので,配置先を見直すように指示した。また,②物理サーバ SV01~03 における仮想サーバの配置方法については検討が不十分であるので,更に検討するように指示した。
G部長は,物理サーバに障害が発生したとき,それまで稼働していた全ての仮想サーバを別の物理サーバに移動させようとしても,移動できない仮想サーバが発生することに気づいた。現行では物理サーバの割当て可能な最大のリソース値をすぐに増やすことができないので,当面の対応として,移動させる仮想サーバについて,③業務特性に応じた制限を加える必要があると考えた。その制限についても検討するように指示をした。
指示を受けたF君は,指摘事項を反映した移行計画書を作成し,G部長に報告した。
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設問1
〔サーバ移行の計画立案〕について,(1),(2)に答えよ。
- 図2だけではなく図3の確認も必要である理由を,30字以内で述べよ。
- 在庫管理システムの稼働特性を考慮した場合,図2と図3以外に見るべき指標は何か。15字以内で答えよ。
解答例・解答の要点
- リソース使用率の最大値を把握する必要があるから (23文字)
- ・業務ピーク月のリソース使用率 (14文字)
・6月のリソース使用率 (10文字)
解説
サーバ仮想環境におけるサーバ統合やサーバ移行を題材に、サーバ仮想環境におけるシステム運用の基本知識、運用段階で実施するキャパシティ管理活動の理解度が問われています。- 図2は9月の月間を通しての日ごとのリソース使用率を示していますが、「時間帯ごとのリソース使用率の平均値」であることに注意する必要があります。図2からは、リソースには余裕があるように見えますが、図3を見ると、時間帯によってリソース使用率のばらつきが大きく、リソース不足が発生する可能性があることがわかります。例えば、図2における業務ピーク日である27日のCPU使用率は約50%ですが、業務のピーク日においてはCPU使用率が100%近くに達する時間帯があることが図3からわかります。リソース不足が発生するとシステムが稼働停止するおそれがありますので、キャパシティプランニングにおいてはそのリスクを把握するために、リソース使用率の平均値ではなく最大値を把握する必要があります。
∴リソース使用率の最大値を把握する必要があるから - 本文の在庫管理システムの稼働特性について記載された箇所から、図2と図3の情報ではカバーされない特性を探します。「年間を通じて業務ピーク月である6月の処理量が他の月と比べて多くなる傾向がある」と記載されていますが、図2、図3ともに9月のリソース使用率を表したもので、6月はさらにリソースが不足する可能性があります。
(1)で説明した通り、リソース使用率の最大値を把握する必要があるので、業務ピーク月である6月のリソース使用率も考慮する必要があります。
∴業務ピーク月のリソース使用率
又は
6月のリソース使用率
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設問2
〔移行計画書の見直し〕について,(1)~(4)に答えよ。
解答群
- 仮想サーバが必要とするリソース値は常に同じ値であるので,配置する物理サーバについての考慮は不要である。
- 仮想サーバヘ割り当てたリソース値を業務量に応じて迅速に増やすためには,稼働する物理サーバのリソース値にある程度の余裕をもたせておく必要がある。
- 物理サーバ SV01~03 それぞれが仮想サーバに割り当てるリソース値の合計値を均等にするためには,仮想サーバは SV01 へ優先的に配置する必要がある。
- 物理サーバのメモリについては最大リソース値を超えて割り当てることができるので,仮想サーバの配置先はvCPUのリソース値の考慮が不要である。
- 物理サーバのリソースの利用効率を高めるためには,仮想サーバの配置先はメモリとvCPUのリソース値の空き割合が偏らないように考慮する必要がある。
解答例・解答の要点
- SV02上の仮想サーバに必要なメモリ容量の割り当てができない (30文字)
- イ ※順不同
オ ※順不同
- 業務上の重要性の高さによって移動を制限する (21文字)
解説
- 仮想サーバの配置先がSV02ではなぜ不適切かを考えます。そのために、在庫管理システムのサーバ移行計画を作っている時点でSV02がどのような状態にあるかを表1から読み取ります。vCPU数は生産管理、会計、人事で使われている合計4、メモリ容量は同じ3システムで使われている合計44Gバイトです。表2で示される在庫管理システムで必要なリソース値(vCPU数が2、メモリ容量が24Gバイト)をこれに加えると、必要とされるvCPU数は6、メモリ容量は68Gバイトとなります。
表1の後にサーバ仮想環境のリソース割り当ての制約事項として、「物理サーバ SV01~03 が割当て可能な最大のリソース値は,それぞれvCPU数が8,メモリ容量が64Gバイトである」と記載されており、在庫管理システムをSV02に配置した場合、必要とされるメモリ容量が最大のリソース値である64Gバイトを超えてしまいます。そして、「このサーバ仮想環境では,最大のリソース値を超えた割当てはできない」とされています。
したがって、G部長が指摘した不備とは、メモリ不足によりV11とV12の両方を同時にSV02に配置できないという点です。
∴SV02上の仮想サーバに必要なメモリ容量の割り当てができない - 表1で示されるSV01~03の現状の割り当て状況を前提に、それぞれの物理サーバのvCPU数が合計で8,メモリ容量が合計で64Gバイトを超えない組み合わせを探します。まず、SV01のvCPU数が8に達しているので、SV01にはさらに仮想サーバを配置できません。また、設問(1)のように、VM11とVM12の両方をSV02に配置することもできません。最もリソースに余裕あるのはSV03で、VM11とVM12の両方をSV03に配置するか、SV02とSV03に分けて配置するかの組み合わせを案とすることができます。
- 本文と照らしてそれぞれの解答群が適切かどうかを考察します。
- 表1によれば、仮想サーバによって必要とするリソース値は異なります。また、「仮想サーバに割り当てたリソース使用量(以下,リソース値という)は,システムの稼働に必要な最小値であり」と本文に記載されていますので、常に同じ値にはなりません。また、リソース使用量は年を追うごとに増加していくと予測されます。
- 正しい。業務量によって必要とされるリソースの値は変動することがありますので、ある程度の余裕をもたせておくことは重要です。
- 仮想サーバをSV01に優先的に配置すると、SV01のリソースの合計値だけが常に高くなるため均等になりません。現状でリソース使用量が少ないSV03に優先的に配置すべきです。
- 表1の後の本文に「このサーバ仮想環境では,最大のリソース値を超えた割当てはできない」と記載されているので誤りです。
- 正しい。特定の物理サーバのリソース割り当て量が高くなると、あるサーバでは負荷が高くなっているのに、一方のサーバではリソースの余剰があるというようにリソースの利用効率が悪くなります。したがって、割り当てるvCPU数やメモリ容量に偏りができないように仮想サーバを配置することが必要です。
- まず、下線の「業務特性」についての本文の記載を探します。「業務システムには,稼働停止が許されない業務上の重要性が高いシステム(販売管理及び生産管理)と,それ以外の数日間程度の停止であれば許されるシステムがある」と記載されています。また、下線③の直前にある「物理サーバに障害が発生したとき,それまで稼働していた全ての仮想サーバを別の物理サーバに移動させようとしても,移動できない仮想サーバが発生する」ことが起きてしまう理由は、表1の後の本文に記載されています。「移動しようとした先の物理サーバで必要なvCPU数及びメモリ容量が割当てできない場合には,移動は行われない」からです。このE社の業務特性とサーバ仮想環境の制約事項を考慮すると、物理サーバに障害が発生した時に、業務上の重要性が高いシステムが稼働している仮想サーバを優先的に移動し、それ以外の仮想サーバについては、物理サーバが復旧するまでの間は稼働停止もやむを得ないとすることが加えるべき制限となります。
∴業務上の重要性の高さによって移動を制限する
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