平成21年春期試験午後問題 問1
問1 経営戦略
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マーケティング戦略の立案に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。
マーケティング戦略の立案に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。
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〔B社の概要〕
B社は資本金3,000万円,年商約21億円の食品スーパーで,大都市周辺のベッドタウンC市内に3店舗を展開している。店舗は,C市内にある私鉄の三つの駅の近辺に広がる住宅地に1店ずつ配置されている。B社は経営環境の変化に伴う経営見直しのために,新たなマーケティング戦略を立案することにした。
各店舗とも,全来店客に占める,近隣の住宅地に住むシルバー世代の割合が高いので,シルバー世代向けに総菜の充実,日用雑貨の販売などによるワンストップショッピングを実現している。そのほかには商品の品揃えに特徴を設けてはいない。
B社は生鮮野菜や鮮魚について独自の仕入れルートをもっており,一般的な食材以外に競合他店では仕入れが困難な高級食材や珍しい食材の入手も可能である。しかし,低価格での販売を店舗コンセプトにしているので,現在はそのような食材の仕入れ・販売はしていない。また,一部の店舗で実施していた対面販売も,売場が対面販売向けに作られていなかったので使い勝手が悪く,現在では行っていない。
店舗面積は各店とも300㎡程度で品揃えの拡大には限界がある。駐車場も30台分程度と狭い。
〔外部環境〕
B社は外部環境の調査を専門企業に依頼して,次の事実を把握した。
このような競合環境から,B社では近隣住民の年齢構成の変化を踏まえて,シルバ一世代の固定客を維持しつつ,新たな顧客層の開拓を目指したマーケティング戦略を立案することにし,次の1~3の手順に従って進めた。
B社は資本金3,000万円,年商約21億円の食品スーパーで,大都市周辺のベッドタウンC市内に3店舗を展開している。店舗は,C市内にある私鉄の三つの駅の近辺に広がる住宅地に1店ずつ配置されている。B社は経営環境の変化に伴う経営見直しのために,新たなマーケティング戦略を立案することにした。
各店舗とも,全来店客に占める,近隣の住宅地に住むシルバー世代の割合が高いので,シルバー世代向けに総菜の充実,日用雑貨の販売などによるワンストップショッピングを実現している。そのほかには商品の品揃えに特徴を設けてはいない。
B社は生鮮野菜や鮮魚について独自の仕入れルートをもっており,一般的な食材以外に競合他店では仕入れが困難な高級食材や珍しい食材の入手も可能である。しかし,低価格での販売を店舗コンセプトにしているので,現在はそのような食材の仕入れ・販売はしていない。また,一部の店舗で実施していた対面販売も,売場が対面販売向けに作られていなかったので使い勝手が悪く,現在では行っていない。
店舗面積は各店とも300㎡程度で品揃えの拡大には限界がある。駐車場も30台分程度と狭い。
〔外部環境〕
B社は外部環境の調査を専門企業に依頼して,次の事実を把握した。
- 商圏内の人口分布では60歳以上が27%を占めており,高齢化が進んでいた。しかし,最近私鉄の路線が更に延長され,大幅な増便で便利になったことから,大型マンションや家族寮の建設が相次ぎ,車離れの傾向が見られる若い世帯や30~40代のDINKs(子供をもたない共働き世帯)の流入が顕著になってきた。
- 30~40代のDINKsのうち35%の人は,自分で調理して食事を楽しみたいと考えているが,そのうちの55%は調理方法に詳しくない。
- シルバー世代は自分で調理する人は少ないが,食事にこだわりをもつ傾向は強い。
- B社の店舗がある住宅地の近辺には,総合スーパーが2店ある。いずれも店舗面積は2,000㎡以上で,大型駐車場を併設している。品揃えは幅広く,特定の分野には特化していない。2店とも低価格での販売を競っており,店舗運営コストを抑えるために,対面販売は一切行っていない。幅広い年齢層をターゲットにしているが,最近はシルバー世代をねらった品揃えを充実させている。
- コンビニエンスストアは年々店舗数が増え,現在B社の商圏内に8店点在している。いずれも売れ筋の食料品や日用品に特化した品揃えで,弁当や総菜も充実させている。
このような競合環境から,B社では近隣住民の年齢構成の変化を踏まえて,シルバ一世代の固定客を維持しつつ,新たな顧客層の開拓を目指したマーケティング戦略を立案することにし,次の1~3の手順に従って進めた。
- 市場の細分化
外部環境の調査結果などから,B社の商圏内の顧客を同質のニーズや類似した購買傾向をもつグループに細分化して分析した結果,まず次の四つのグループ(以下,I~Ⅳで表す)をターゲット市場の候補として選定した。- 店舗の徒歩(半径1km以内)に住む世帯
- 可処分所得に余裕がある30~40代のDINKs
- 車をもっていない世帯
- 自分で調理して食事を楽しみたいと考えている世帯
- ターゲット市場の選定
市場の細分化によって選定した四つの候補の中から,B社の企業体力を考慮して,最も有望な1グループに絞り込んで新たなターゲット市場を選定することにした。候補を絞り込むために,次の五つの視点から各グループの有効性を分析し,評価した。
・aは適正で成長性があるか・市場の収益性は高いか・cの高さはあるか・他店との競合状態は厳しいか・現在の顧客とのdは期待できるか 以上の結果,ターゲット市場をⅣに絞り込むことにしたが,aが十分ではなく,かつ,シルバー世代の固定客への配慮が不十分だと判断した。シルバー世代の固定客を維持することも考慮して,"自分で調理して食事を楽しみたい世帯"と"手間をかけずに食事を充実させたい世帯"を併せてターゲット市場に選定した。 - 店舗コンセプトの策定
選定したターゲット市場にふさわしい店舗コンセプトとして,"豊かな食の提供"を掲げることにした。この店舗コンセプトに合致する店づくりを,B社の企業体力から,価格ではなく品揃えとサービスの両面から実現する。具体的には,調理の楽しみと豊かな食の実現に必要な食材や総菜をアピールした品揃えに特化することによって,e店舗コンセプトを強調する。また,他店では仕入れが困難な生鮮野菜や鮮魚の品揃えと調理の提供,対面販売の再開によって競合他店では模倣しにくい優位性を実現する。
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設問1
市場の細分化,ターゲット市場の選定について,(1),(2)に答えよ。
- 今回の分析では,細分化の基準(変数)として,解答群の四つの変数を使用した。分析の対象とした可処分所得,調理と食事の楽しみ,来店の頻度は,それぞれどの変数に該当するか。解答群の中から選び,記号で答えよ。
- 本文中の下線部の理由を"経営資源"の観点から30字以内で述べよ。
解答群
- 行動的変数
- 人口統計的変数
- 心理的変数
- 地理的変数
解答例・解答の要点
- 可処分所得:イ
調理と食事の楽しみ:ウ
来店の頻度:ア
- 経営資源を集中的に投入することを可能にする (21文字)
解説
- マーケティングのセグメントに関する問題です。
マーケティングにおけるセグメントとは、市場細分化における一つ一つの要素です。一般的には、デモグラフィック変数(人口動態変数)、サイコグラフィック変数(心理的変数)、ジオグラフィック変数(地理的変数)、ビヘイビアル(行動変数)の4つがあります。- デモグラフィック(Demographics)
- 年齢、性別、所得など、個人の社会的属性
- サイコグラフィック(Psychographic)
- 価値観、趣味嗜好など、心理的な属性
- ジオグラフィック(Geographic)
- 消費者の済んでいる地域の特性や文化など、地理的な属性
- ビヘイビアル(Behavior)
- 購買履歴、行動範囲、使用時間など、消費者の行動に関する属性
可処分所得:イ(人口統計的変数)
調理と食事の楽しみ:ウ(心理的変数)
来店の頻度:ア(行動的変数) - 市場を細分化し、ターゲット市場の選定を行う理由について「経営資源」の観点から述べる必要があります。市場を細分化し、その中の(自社の勝機が見込める)特定の市場に集中して販売活動を行うことを「ターゲットマーケティング」と言います。ターゲットマーケティングを行う理由としては、ターゲットを絞り込むことで①きめ細やかなサービスが提供できる、②経営資源の集中投下により効率的な経営ができる、③他社との差別化ができるなどが挙げられます。経営資源の観点から述べると、②の様な「経営資源を集中的に投入することができる」と言うことが当てはまります。
∴経営資源を集中的に投入することを可能にする
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設問2
ターゲット市場の選定について,本文中のa~dに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
a,b,c,d に関する解答群
- 価格弾力性
- コアコンピタンス
- サンクコスト
- 参入障壁
- 市場規模
- シナジー効果
- ライフタイムバリュー
解答例・解答の要点
a:オ
b:ア
c:エ
d:カ
b:ア
c:エ
d:カ
解説
一般的に、ターゲット市場を選定する場合、「市場の魅力度」と「自社の地位」を評価して選定します。「市場の魅力度」とは、市場規模、収益性、将来性(ライフサイクル)、参入障壁など、市場そのもの評価が該当します。「自社の地位」とは、市場の競争状況、主要顧客との関係、自社の実績など、その市場における自社の位置付けが該当します。〔aについて〕
文脈から市場の魅力度に関する文言であると推定できます。外部環境や国勢調査の結果からわかるものとしては「オ:市場規模」が該当します。
〔外部環境〕では、Ⅱを適正と判断した理由として「商圏にDINKsの流入が顕著になってきた」、Ⅳが十分ではないと判断した理由として「60歳以上が27%を占めているがシルバー世代は自分で調理する人が少ない」などの記述があります。
〔bについて〕
高い収益性が期待できるパラメータ名です。B社はこれまで低価格路線で経営を行ってきましたが、これからは高級食材も販売する考えです。この際に懸念されるのは、価格が上がることで需要が減少することです。しかし、Ⅳの「自分で調理して食事を楽しみたいと考えている世帯」はDINKsであり、一般に可処分所得が高い世帯ですので、付加価値が高ければ高価格帯でも購買されると考えられます。このような、価格と購買の変動特性を価格の弾力性といい、Ⅳのグループにとっては「ア:価格の弾力性」が低いと言えます。
〔cについて〕
「配送サービスを安価で提供」「珍しい食材の品揃え」「対面販売」等によって得られるメリットです。特に〔B社の概要〕より、「B社は生鮮野菜や鮮魚について独自の仕入れルートをもっており,一般的な食材以外に競合他店では仕入れが困難な高級食材や珍しい食材の入手も可能である」という記述から、他社が簡単に真似できないことがわかります。一般的に持続的な競争優位性をもたらす内部環境として、経済価値、希少性、模倣困難性、組織があります(VRIO分析の4つの視点)。希少性があり模倣困難性を備える事業は、競合他社にとって、「エ:参入障壁」が高くなるので持続的な競争優位を保ちやすくなります。
〔dについて〕
新たなマーケティング戦略を立案する上では、現在の顧客への影響も考慮しなくてはなりません。B社の現在の主な顧客はシルバー世代ですが、徒歩圏の60歳以上の人口が多い、シルバー世代は車を持っていないことも多い、食事にこだわりがある等、ターゲットとする顧客層との重複が認められます。これにより新たなマーケティング戦略が既存の顧客にも好影響を及ぼし、需要の拡大につながる可能性が考えられます。このように複数の要素が合わさることによって、単体で実施するよりも高い効果が望める効果を「カ:シナジー効果」といいます。シナジー効果は「相乗効果」とも言います。
なお、サンクコスト(埋没費用)は、既に投下され、意思決定に内容にかかわらず回収できない費用のこと、ライフタイムバリューは企業が顧客1人から得られる生涯価値のことです。
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設問3
店舗コンセプトの策定について,本文中のeに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
e に関する解答群
- 競合他社との違いが訴求できる
- 競合他社との同質化が促進できる
- チャネルパワーが拡大できる
- ブランドエクイティが高まる
解答例・解答の要点
e:ア
解説
店舗コンセプトの具体的な強調策として、「調理の楽しみと豊かな食の実現に必要な食材や総菜をアピールした品揃えに特化する」とあります。続いて「他店では仕入れが困難な生鮮野菜や鮮魚の品揃えと調理の提供,対面販売の再開によって競合他店では模倣しにくい優位性を実現する」とあり、要約すると「競合との差別化」を図っていると考えられます。したがって「ア」が適切です。
- 正しい。
- 「競合他店では模倣しにくい優位性を実現する」とあるため不適切です。
- 品揃えを特化することで差別化を図っており、チャネルパワーは拡大しません。
- ブランドエクイティとは無形の資産価値です。今後高まっていく可能性はありますが、このコンセプト変更によって高まるものではないため不適切です。
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設問4
新たなマーケティング戦略における具体的な施策として,"品揃えを拡充するための健康補助食品医薬部外品の取扱い"を検討したが採用しなかった。採用しなかった理由を,本文中の〔マーケティング戦略の立案プロセス〕での記述を勘案して,30字以内で述べよ。
解答例・解答の要点
店舗コンセプトに合致する品揃えが維持できなくなるから (26文字)
解説
〔マーケティング戦略の立案プロセス〕によって得られた検討結果は、「豊かな食の提供」というコンセプトのもと、「他店では仕入れが困難な生鮮野菜や鮮魚の品揃えに特化する」ことで、競合他社との差別化を図るということです。健康補助食品・医薬部外品の取扱いは店舗コンセプトとの整合性がないので、店舗の特徴を曖昧にしてしまい、顧客のブランド認知を阻害してしまう可能性があります。よって、店舗コンセプトに合致する品揃えを維持するために採用を見送ったと考えられます。∴店舗コンセプトに合致する品揃えが維持できなくなるから
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