応用情報技術者過去問題 平成24年春期 午後問1
⇄問題文と設問を画面2分割で開く⇱問題PDF問1 戦略立案・コンサルティング技法
ロジカルシンキングによる販売戦略立案に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。
M社は,婦人服小売業を営む中堅企業で,あり,首都圏に複数店舗を展開している。比較的富裕な顧客層を主要ターゲットとし品ぞろえも高品質なものを中心としている。近年は低価格で高品質な商品を販売する他社やインターネットショップとの競合の影響で,売上が低迷しており,売上回復が経営課題となっている。
各店舗の店長,店員は豊富な商品知識を有しており,時間を掛けて顧客と会話する。その結果,顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できることが,顧客の間では,他社やインターネットショップにない長所として好評を博している。
各店舗では顧客台帳を作成し,顧客の住所,氏名,性別,生年月日といった属性情報を記載しているが,顧客の購入履歴は,各店員が個別に管理している。その結果,顧客対応が属人化しており,店員の退職時や異動時などの引継ぎに支障を来すことがある。また,店員からは,提案を効率よく行うために,顧客別の購入履歴を必要なときに,いつでも見られるようにしてほしいという要望が多く,顧客情報の共有が課題となっている。
M社は人事評価制度として,目標管理制度を導入しており,店長は店舗の売上,店員は各自の売上の目標を設定し,その達成度を管理している。
〔M社の経営環境の分析〕
M社では経営課題への対応を検討するために,ブレーンストーミングを行い,意見を収集した。図1~図3は収集された意見を分類し作成したピラミッドストラクチャであり,二重枠線の箇所が収集された意見である。〔M社の販売戦略の見直し〕
M社では,ピラミッドストラクチャによる分析を基に,販売戦略の見直しを行った。検討の結果,経営資源の分散や高品質イメージの低下を避け,次の販売戦略を採ることが決定された。
M社は,続いて具体的な店舗施策の検討を行った。抽出された問題点は次のとおりであった。
M社は,婦人服小売業を営む中堅企業で,あり,首都圏に複数店舗を展開している。比較的富裕な顧客層を主要ターゲットとし品ぞろえも高品質なものを中心としている。近年は低価格で高品質な商品を販売する他社やインターネットショップとの競合の影響で,売上が低迷しており,売上回復が経営課題となっている。
各店舗の店長,店員は豊富な商品知識を有しており,時間を掛けて顧客と会話する。その結果,顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できることが,顧客の間では,他社やインターネットショップにない長所として好評を博している。
各店舗では顧客台帳を作成し,顧客の住所,氏名,性別,生年月日といった属性情報を記載しているが,顧客の購入履歴は,各店員が個別に管理している。その結果,顧客対応が属人化しており,店員の退職時や異動時などの引継ぎに支障を来すことがある。また,店員からは,提案を効率よく行うために,顧客別の購入履歴を必要なときに,いつでも見られるようにしてほしいという要望が多く,顧客情報の共有が課題となっている。
M社は人事評価制度として,目標管理制度を導入しており,店長は店舗の売上,店員は各自の売上の目標を設定し,その達成度を管理している。
〔M社の経営環境の分析〕
M社では経営課題への対応を検討するために,ブレーンストーミングを行い,意見を収集した。図1~図3は収集された意見を分類し作成したピラミッドストラクチャであり,二重枠線の箇所が収集された意見である。〔M社の販売戦略の見直し〕
M社では,ピラミッドストラクチャによる分析を基に,販売戦略の見直しを行った。検討の結果,経営資源の分散や高品質イメージの低下を避け,次の販売戦略を採ることが決定された。
- ①M社の強みを生かし,他社やインターネットショップとの差別化を図る。
- 他社やインターネットショップとのdを避け,ターゲット顧客を,高品質志向をもつ中高年層に限定する。
- 顧客のし好に合った,服と小物雑貨のトータルコーディネートを提案する,提案型の販売スタイルをとる。
- 品ぞろえのノウハウを生かして,服だけでなく厳選した小物雑貨も取りそろえたセレクトショップに転換し,eショッピングを可能にする。
M社は,続いて具体的な店舗施策の検討を行った。抽出された問題点は次のとおりであった。
- 退職や異動などで,特定の顧客を担当している店員が不在になった場合,他の店員では顧客のし好に合う最適な提案をすぐに行うことができない。
- 店員は,顧客から聞き出した情報を他の店員に提供することに,あまり積極的ではない。
- 顧客情報の店舗間及び店員間での共有を可能にするために,顧客管理システムを構築し,顧客の属性情報に加えて,購入履歴と顧客のし好を入力する。店員が,顧客に応対しながら,②顧客管理システムを活用して,商品提案を行うことを可能にする。
- 目標管理制度を見直し,店員の目標に売上以外の目標を追加する。
設問1
〔M社の経営環境の分析〕について,(1),(2)に答えよ。
- ピラミッドストラクチャの作成技法について,適切なものを解答群の中から選び,記号で答えよ。
- 図1~図3中のa~cに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
(1) に関する解答群
- 経営戦略に基づいて作成されている。
- ファイブフォース分析によって分類されている。
- 分類の観点に重複がない。
- 問題をトップダウンで整理している。
a に関する解答群
- インターネットショップの出店料が下がっている。
- 海外の有力専門店が進出している。
- 消費者が,品質を重視しなくなっている。
- 低価格品における競争が激化している。
b に関する解答群
- 価格に対する消費者の意識が二極化している。
- 高品質商品,高付加価値サービスへのニーズが高まっている。
- 雑貨アイテムに力を入れる企業が増えている。
- バッグや帽子,アクセサリなどの需要が高まっている。
c に関する解答群
- 顧客との会話から,好きな色やブランドを聞き出している。
- 商品知識を身に付けさせるための店員教育制度が整備されている。
- 優れた接客技術を有している。
- 他店から,優れた人材の紹介を受けている。
解答入力欄
- o:
- a:
- b:
- c:
解答例・解答の要点
- o:ウ
- a:エ
- b:イ
- c:ア
解説
- ピラミッドストラクチャとは、物事や考え方を整理するためのフレームワークです。構成を考えることで、相手に正確に考えを伝えたり、説得力のある主張が出来るようになります。ピラミッドストラクチャなどのフレームワーク全般を行う際に注意すべきことは、Mutually(お互いに)Exclusive(重複せず)Collectively(全体に)Exhaustive(漏れがない)であり、一般的に頭文字をとってMECE(ミッシー、ミーシー)と呼ばれています。MECEは、情報をモレなくダブりなく整理するための手法としてマッキンゼー・アンド・カンパニー社にて考案されたものです。本問のピラミッドストラクチャの分類は3C分析の視点である「競合」「顧客」「自社」であり、重複がないと言えます。多くのビジネスフレームワークがありますが、分類や視点にMECEの考え方が取り入れられています。
∴ウ:分類の観点に重複がない。- 経営戦略を策定するための分析を行っています。分析の結果に基づいて経営戦略が立案されるので順序が逆です。
- 競合、顧客、自社は3C分析の分類です。ファイブフォース分析では、新規参入者の脅威、代替品の脅威、既存企業間の競争関係、売り手の交渉力、買い手の交渉力という5つに分類します。
- 正しい。
- 収集された意見を集約しているのでボトムアップです。
- 〔aについて〕
図1は、競合の観点で整理したピラミッドストラクチャであることから、aにはそれに準じた内容が入ります。また、ピラミッドの構成要素には「低価格」や「価格を抑えた」というキーワードが共通していることがわかります。内容については、「同業他社が躍進」「低価格化が進行」「価格を抑えたプライベートブランド品の扱いを増やしている」といった部分が共通しており、価格競争が激化しているものと考えられます。
∴a=エ:低価格品における競争が激化している
〔bについて〕
図2は、顧客の観点で整理したピラミッドストラクチャであることから、bにはそれに準じた内容が入ります。ピラミッドの構成要素の内容をみると、「高品質な商品に対するニーズの高まりがみられる」「ファッション性の高い商品を求める顧客が増えている」「質の良い小物雑貨も一緒に購入したい」といった部分が共通しています。このことから、高付加価値へのニーズが高まっていると考えられます。
∴b=イ:高品質商品,高付加価値サービスへのニーズが高まっている
〔cについて〕
図3は、自社の観点で整理したピラミッドストラクチャであることから、cにはそれに準じた内容が入ります。ピラミッドの頂点の内容をみると、「高品質な商品をそろえ、顧客のし好に適した商品を提案できる」とあります。これを下方へブレークダウンしてcについて解いていきます。まず提案できる理由として、「顧客のし好を詳細に把握している」ことを挙げています。さらにこの理由として、「顧客ごとの購入履歴を調べている」とあります。
これらを踏まえて、選択肢から「顧客のし好を詳細に把握」できる方法として適切なものを選択すると「ア」になります。他の選択肢は図3の「店長,店員が十分な商品知識を有している」という要素をブレークダウンした事象です。
∴c=ア:顧客との会話から,好きな色やブランドを聞き出している
設問2
本文中のd,eに入れる適切な字句を答えよ。
解答入力欄
- d:
- e:
解答例・解答の要点
- d:価格競争
- e:ワンストップ
解説
〔dについて〕
販売戦略上、他社やインターネットショップから避けるべき事柄です。図1の競合の観点で整理したピラミッドストラクチャより、他社やインターネットショップでは、低価格化が進んでいることがわかります。M社の採った経営戦略は「高品質イメージの低下を避け」る方向性を持っていますから、低価格帯ではなく高価格帯の高品質・高付加価値を打ち出していくと読み取れます。低価格帯を提供して同質化を狙うと価格競争に陥って利益が少なくなるリスクがあるため、価格競争を避けて競合他社と差別化する戦略を採るべきであるといえます。
同じ意味を持つ、値引き合戦、価格戦争及び安売り競争などでも問題ないでしょう。
∴d=価格競争
〔eについて〕
本文より「品ぞろえのノウハウを生かして,服だけでなく厳選した小物雑貨も取りそろえたセレクトショップに転換」とあることから、服以外の小物雑貨も買うことができ、トータルコーディネートが可能な店舗を目指していると考えられます。すなわち、一つの店舗で様々なアイテムを買いそろえることが可能であると言えます。このように消費者が希望する多様な商品を取りそろえ、1か所で購入を完結できるようにした小売形態を「ワンストップショッピング」と言います。
∴e=ワンストップ
販売戦略上、他社やインターネットショップから避けるべき事柄です。図1の競合の観点で整理したピラミッドストラクチャより、他社やインターネットショップでは、低価格化が進んでいることがわかります。M社の採った経営戦略は「高品質イメージの低下を避け」る方向性を持っていますから、低価格帯ではなく高価格帯の高品質・高付加価値を打ち出していくと読み取れます。低価格帯を提供して同質化を狙うと価格競争に陥って利益が少なくなるリスクがあるため、価格競争を避けて競合他社と差別化する戦略を採るべきであるといえます。
同じ意味を持つ、値引き合戦、価格戦争及び安売り競争などでも問題ないでしょう。
∴d=価格競争
〔eについて〕
本文より「品ぞろえのノウハウを生かして,服だけでなく厳選した小物雑貨も取りそろえたセレクトショップに転換」とあることから、服以外の小物雑貨も買うことができ、トータルコーディネートが可能な店舗を目指していると考えられます。すなわち、一つの店舗で様々なアイテムを買いそろえることが可能であると言えます。このように消費者が希望する多様な商品を取りそろえ、1か所で購入を完結できるようにした小売形態を「ワンストップショッピング」と言います。
∴e=ワンストップ
設問3
本文中の下線①について,M社の強みを30字以内で述べよ。
解答入力欄
- o:
解答例・解答の要点
- o:顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できる (24文字)
解説
自社の強みを把握することは、経営戦略を練るうえで最も基本的な行為です。本問では、「M社の強みを生かし,他社やインターネットショップとの差別化を図る」とありますので、差別化可能なM社の強みとなる部分を探します。
本文2段落目より、「各店舗の店長,店員は豊富な商品知識を有しており,時間を掛けて顧客と会話する。その結果,顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できることが,顧客の間では,他社やインターネットショップにない長所として好評を博している」という記述があり、これがM社の強みと関係している部分です。文章は前半と後半に分かれており、豊富な商品知識を持った店員が時間をかけて接客した結果、前述の強みが生まれていると考えられます。また、「顧客の間では…」以降は、どのように差別化されるかという説明に当たるため、この部分を省略し、強みとなる部分をまとめます。これは、図3の自社分析の集約結果と同じです。
∴顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できる
本文2段落目より、「各店舗の店長,店員は豊富な商品知識を有しており,時間を掛けて顧客と会話する。その結果,顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できることが,顧客の間では,他社やインターネットショップにない長所として好評を博している」という記述があり、これがM社の強みと関係している部分です。文章は前半と後半に分かれており、豊富な商品知識を持った店員が時間をかけて接客した結果、前述の強みが生まれていると考えられます。また、「顧客の間では…」以降は、どのように差別化されるかという説明に当たるため、この部分を省略し、強みとなる部分をまとめます。これは、図3の自社分析の集約結果と同じです。
∴顧客のし好を十分に把握し,最適な商品を提案できる
設問4
〔店舗施策の検討〕について,(1),(2)に答えよ。
- 本文中の下線②を実現するために必要な顧客管理システムの機能要件を25字以内で述べよ。
- 店員の目標として追加すべきものは何か。35字以内で述べよ。
解答入力欄
解答例・解答の要点
- 顧客別の購入履歴を即時に参照できる機能 (19文字)
- 顧客への提案に有益な情報を顧客管理システムに入力した件数 (28文字)
解説
- まず、実現したい内容について整理します。実現したいことは、「店員が,顧客に応対しながら,顧客管理システムを活用して,商品提案を行うことを可能にする」です。この顧客管理システムについては、「顧客情報の店舗間及び店員間での共有を可能にするために,顧客管理システムを構築し,顧客の属性情報に加えて,購入履歴と顧客のし好を入力する」という仕組みであることがわかります。
次に、問題となっている部分を抽出します。〔店舗施策の検討〕より、「退職や異動などで,特定の顧客を担当している店員が不在になった場合,他の店員では顧客のし好に合う最適な提案をすぐに行うことができない」と言うことが問題点として挙げられています。また、本文3段落目には、「店員からは,提案を効率よく行うために,顧客別の購入履歴を必要なときに,いつでも見られるようにしてほしいという要望が多く,顧客情報の共有が課題となっている」という課題があることがわかります。
これらから判断できることをまとめると、「顧客情報を共有できる顧客管理システムを使用し、即座に顧客別の購入履歴を参照することで、顧客に応対しながら商品提案を行う」ことを実現したいと考えられます。設問では、機能要件※を述べるよう指示がありますので、機能要件に該当する部分を抜き出して記述します。
∴顧客別の購入履歴を即時に参照できる機能
機能要件…システムやソフトウェア開発に際して定義される要件のうち、機能に関するもの。簡単に言うと、そのシステムを使って実現できること。 - M社の抽出された問題点として、「店員は,顧客から聞き出した情報を他の店員に提供することに,あまり積極的ではない」ということが挙げられています。なぜなら、顧客情報を共有すると自分の顧客を別の店員に奪われ、個人の売上目標の達成に悪影響を与える可能性があるからです。
顧客管理システムを活用するためには、顧客のし好などをデータベースとしてインプットし、蓄積しなければ意味がありません。目標管理制度に追加された項目は、上記の問題を解消し、顧客管理システムへの購入履歴等の入力を促すものでなくてはなりません。M社では目標管理制度を人事評価に使用しているので、店員の目標として「顧客への提案に有益な情報を顧客管理システムに入力した件数」を追加することが有効であると考えられます。
∴顧客への提案に有益な情報を顧客管理システムに入力した件数