応用情報技術者過去問題 平成22年秋期 午後問11
⇄問題文と設問を画面2分割で開く⇱問題PDF問11 サービスマネジメント
バックアップに関する次の記述を読んで,設問1,2に答えよ。
X社は,保管したファイルを共有する手段として,ファイルサーバの構築を計画している。
ファイルサーバの構築においては,ファイルの損失を防ぐためにバックアップの方式や手順を考慮する必要がある。今回のファイルサーバの構築における制約事項を次に示す。
すべてのファイルをバックアップする,通常バックアップ(フルバックアップともいう)方式を用いることを検討する。
ファイルサーバのバックアップに関する条件を次に示す。
ファイルサーバを1台のサーバで構築した場合,全部署のファイルサービス停止可能時間帯の条件を満たすことができない。2台のサーバで構築し,1台のサーバをcが,もう1台のサーバを残りの部署が使えば,これらの条件を満たすことができる。
〔バックアップ方式の見直し〕
ファイルサーバ1台で構築できるよう,バックアップ方式を見直すことにした。月に1度,第1日曜日に通常バックアップを行い,そのほかの日は,次に示す増分バックアップ又は差分バックアップのいずれかを行う。
①について,増分バックアップ及び差分バックアップファイルの対象となるファイルサイズの合計は,最大dGバイトであり,いずれの方式でも,最短である部署Aのファイルサービス停止可能時間帯でバックアップを完了できることが分かる。
②について,毎回異なる磁気テープを使用する運用において,差分バックアップは,増分バックアップに比べ,次のような特性をもつことが分かった。
①と②の検討結果から,X社はhバックアップ方式を採用することに決めた。
X社は,保管したファイルを共有する手段として,ファイルサーバの構築を計画している。
ファイルサーバの構築においては,ファイルの損失を防ぐためにバックアップの方式や手順を考慮する必要がある。今回のファイルサーバの構築における制約事項を次に示す。
- ファイルサーバ1台ごとに,バックアップ用の磁気テープ装置を1台接続する。
- サーバ台数はできるだけ少なくする。
- バックアップ実行中は,当該ファイルサーバのファイルサービスを完全に停止させる必要があり,その間ファイルサービスを利用できない。
- バックアップに要するファイル転送時間は,ファイル1Gバイト当たり9秒とする。なお,磁気テープの交換など,ファイル転送以外に要する時間は考慮しなくてよい。
すべてのファイルをバックアップする,通常バックアップ(フルバックアップともいう)方式を用いることを検討する。
ファイルサーバのバックアップに関する条件を次に示す。
- 3年後(36か月後)の予想ファイルサイズで,通常バックアップが毎日実行可能であること。X社の四つの部署A~Dが保有する現在のファイルサイズ,毎月の予想増加サイズ,3年後の予想ファイル転送時間の関係は表のとおりである。
- 図の各部署のファイルサービス停止可能時間帯でバックアップを完了すること。例えば,部署Aは顧客をサポートする部署であり,ファイルサービスを 02:00~06:00 の4時間に限って停止できる。
なお,週末である土曜日 02:00 から月曜日 06:00 までの52時間は,どの部署もファイルサービスを停止できる。
ファイルサーバを1台のサーバで構築した場合,全部署のファイルサービス停止可能時間帯の条件を満たすことができない。2台のサーバで構築し,1台のサーバをcが,もう1台のサーバを残りの部署が使えば,これらの条件を満たすことができる。
〔バックアップ方式の見直し〕
ファイルサーバ1台で構築できるよう,バックアップ方式を見直すことにした。月に1度,第1日曜日に通常バックアップを行い,そのほかの日は,次に示す増分バックアップ又は差分バックアップのいずれかを行う。
- 増分バックアップ
- 直前の通常バックアップ又は増分バックアップから追加・変更のあったファイルだけをバックアップする。
- 差分バックアップ
- 直前の通常バックアップから追加・変更のあったファイルすべてをバックアップする。
- 各部署のバックアップ対象ファイルの合計サイズは,毎月の予想増加サイズの2倍を超えないものとして,日々の増分バックアップ又は差分バックアップをファイルサービス停止可能時間帯で完了すること。
- ファイルサーバの故障時など必要時に,速やかにかつ安全にリストアできること。すなわち,手順が煩雑にならないこと,できるだけ読み込む磁気テープの本数が少なくなること。
①について,増分バックアップ及び差分バックアップファイルの対象となるファイルサイズの合計は,最大dGバイトであり,いずれの方式でも,最短である部署Aのファイルサービス停止可能時間帯でバックアップを完了できることが分かる。
②について,毎回異なる磁気テープを使用する運用において,差分バックアップは,増分バックアップに比べ,次のような特性をもつことが分かった。
- バックアップに要するファイル転送時間の合計はe。
- リストアする場合に読み込む磁気テープの本数はf。
①と②の検討結果から,X社はhバックアップ方式を採用することに決めた。
設問1
通常バックアップ方式の検討について,(1),(2)に答えよ。
- 本文中のa,bに入れる適切な数値を答えよ。
- 本文中のcに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
c に関する解答群
- 部署A
- 部署B
- 部署C
- 部署D
- 部署AとB
- 部署AとC
- 部署AとD
解答入力欄
- a:Gバイト
- b:時間
- c:
解答例・解答の要点
- a:4,000
- b:10.0
- c:オ
解説
- 〔aについて〕
部署A~Dの3年後における予想ファイルサイズ合計を求めます。毎月の予想増加サイズは、問題文の表から部署A~Dでそれぞれ5/10/15/20Gバイトのため、3年後(36か月後)の予想増加サイズは、
(5+10+15+20)×36=1,800[Gバイト]
現在のファイルサイズに予想増加サイズを加えたものが、3年後の予想ファイルサイズとなります。
620+240+860+480+1,800=4,000[Gバイト]
∴a=4,000
〔bについて〕
問題文のファイルサーバ制約事項として「バックアップに要するファイル転送時間は,ファイル1Gバイトあたり9秒とする。なお,磁気テープの交換など,ファイル転送以外に要する時間は考慮しなくてよい」とあります。単純に(1)で求めたデータサイズに9秒を乗じると、
4,000[Gバイト]×9[秒/Gバイト]=36,000[秒]
1時間は3,600秒なので、時間単位に直すと「36,000秒÷3,600秒=10時間」となります。
∴b=10.0 - 〔cについて〕
まず、表で省略されているの部署A・Dのファイル転送時間を求めます。
部署Aの3年後の予想ファイルサイズは「620+(5×36)=800」、転送時間は「800×9=7,200秒=2時間」です。また、部署Dの3年後の予想ファイルサイズは「480+(20×36)=1,200」、転送時間は「1,200×9=10,800秒=3時間」です。週末以外で部署A~Dがファイルサービスを停止できる時間は、問題文の図から、A:4時間、B:12時間、C:7時間、D:7時間です。これらの条件から、2台のファイルサーバを①、②として、それぞれの選択肢について考えてみましょう。- ファイルサーバ①→A、ファイルサーバ②→B・C・D
ファイルサーバ②の転送時間が「1.5+3.5+3=8時間」となり、部署C・部署Dの停止可能時間7時間を超えてしまいます。よって、不適切です。 - ファイルサーバ①→B、ファイルサーバ②→A・C・D
ファイルサーバ②の転送時間が「2+3.5+3=8.5時間」となり、部署A・部署C・部署Dの停止可能時間を超えてしまいます。よって、不適切です。 - ファイルサーバ①→C、ファイルサーバ②→A・B・D
ファイルサーバ②の転送時間が「2+1.5+3=6.5時間」となり、部署Aの停止可能時間4時間を超えてしまいます。よって、不適切です。 - ファイルサーバ①→D、ファイルサーバ②→A・B・C
ファイルサーバ②の転送時間が「2+1.5+3.5=7時間」となり、部署Aの停止可能時間4時間を超えてしまいます。よって、不適切です。
- ファイルサーバ①→A、ファイルサーバ②→B・C・D
- ファイルサーバ①→A・B、ファイルサーバ②→C・D
ファイルサーバ①の転送時間が「2+1.5=3.5時間」で、部署A・部署Bの停止可能時間内に終わります。
ファイルサーバ②の転送時間が「3.5+3=6.5時間」で、こちらも部署C・部署Dの停止可能時間内に終わります。よって、条件を満たします。 - ファイルサーバ①→A・C、ファイルサーバ②→B・D
ファイルサーバ①の転送時間が「2+3.5=5.5時間」となり、部署Aの停止可能時間4時間を超えてしまいます。よって、不適切です。 - ファイルサーバ①→A・D、ファイルサーバ②→C・D
ファイルサーバ①の転送時間が「2+3=5時間」となり、部署Aの停止可能時間4時間を超えてしまいます。よって、不適切です。
設問2
バックアップ方式の見直しについて,(1)~(4)に答えよ。
- 本文中のdに入れる適切な数値を答えよ。
- 本文中のe,fに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
- 本文中のg,hに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
- 本文中の下線部の理由を40字以内で述べよ。
e に関する解答群
- 通常長くなる
- 通常短くなる
- 変わらない
f に関する解答群
- 通常多くなる
- 通常少なくなる
- 変わらない
g,h に関する解答群
- 増分
- 差分
解答入力欄
- d:Gバイト
- e:
- f:
- g:
- h:
- o:
解答例・解答の要点
- d:100
- e:ア
- f:イ
- g:ア
- h:イ
- o:増分バックアップした複数の磁気テープを古い順に読み込む必要があるから (34文字)
解説
- 〔dについて〕
問題文のバックアップ方式を決めるための検討事項として「各部署のバックアップ対象ファイルの合計サイズは,毎月の予想増加サイズの2倍を超えない」とあります。この記述より、バックアップ対象となるファイルサイズの最大値は、毎月の予想増加サイズの2倍とわかります。毎月の予想増加サイズは、問題文の表から部署A~Dでそれぞれ5/10/15/20Gバイトのため、
5×2+10×2+15×2+20×2
=(5+10+15+20)×2=100[Gバイト]
∴d=100 - 〔eについて〕
増分バックアップと差分バックアップの違いは下図のとおりです。増分バックアップと差分バックアップを比べると、差分バックアップは通常バックアップ(フルバックアップ)から日が経つにつれて、バックアップするファイルサイズの合計が増加していきます。このため、バックアップに要する時間も通常長くなります。
∴e=ア:通常長くなる
〔fについて〕
例えば、上図において水曜日の状態にリストアする場合を考えてみましょう。
毎回異なる磁気テープを使用する運用の場合、増分バックアップでは、日曜日の通常バックアップの磁気テープを読み込んだ後、増分バックアップされた月曜日、火曜日、水曜日のテープを順に読み込みます。よって、合計本数は4本です。一方、差分バックアップでは、日曜日の通常バックアップの磁気テープを読み込んだ後、水曜日の差分バックアップのテープを読み込むだけで済むため、合計本数は2本です。したがって、読み込む磁気テープの本数は通常少なくなります。
∴f=イ:通常少なくなる - 〔gについて〕
リストアの際に手順が煩雑なのは、読み込まなくてはならないテープが多い増分バックアップの方です。また問題文中にも記載があるとおり、データの冗長性がないのでファイルが失われてしまうことがあります。例えば、火曜日に作成された後更新がないファイルは、火曜日の増分バックアップにしか存在しないので、火曜日の増分バックアップファイルが読み取れなかった場合には、そのファイルを復元することは不可能です。
∴g=ア:増分
〔hについて〕
①、②の検討結果をまとめると、増分バックアップと差分バックアップのプラス面・マイナス面は次のとおりです。問題文のバックアップ方式を決めるための検討事項①、②を基準に採用する方式を考えると、増分バックアップ方式は必要となる磁気テープの本数が多く、リストアの手順も煩雑です。この点で差分バックアップ方式が勝っています。差分バックアップのマイナス点はバックアップ時間ですが、バックアップは停止可能時間内に完了できますから問題とはなりません。
以上より、X社が採用したのは「差分」バックアップ方式であると判断できます。
∴h=イ:差分 - [f]でも説明したとおり、増分バックアップにおけるリストア作業は、通常バックアップを適用した後、複数の増分バックアップファイルを順に適用することで行います。磁気テープを適用する順序に気を付けなくてはならない点、磁気テープの切替え作業等を考えると、リストアの手順が煩雑であると言えます。
解答としては、複数の増分バックアップした磁気テープを使うこと、磁気テープを適用する順序に気を付けなければいけないという内容を含めて40字以内にまとめることになります。「増分バックアップした複数の磁気テープを順番に適用しなければならないから」「順番どおりに複数の磁気テープを読み込む必要があるから」などが適切となります。
∴増分バックアップした複数の磁気テープを古い順に読み込む必要があるから