応用情報技術者過去問題 平成24年秋期 午後問10
⇄問題文と設問を画面2分割で開く⇱問題PDF問10 プロジェクトマネジメント
プロジェクト計画に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。
文具類の販売を行うZ社では,販売予算システムを開発することになった。販売予算システムは,予算登録,予算集計,承認ワークフローの三つのサブシステムから構成される。システム部のY君が,プロジェクトマネージャに任命され,スケジュールを立案することになった。
〔アクティビティリストとプロジェクトスケジュールネットワーク図の作成〕
プロジェクトでは,販売予算システム全体を対象に基本設計を行った後,各サブシステムの詳細設計を開始する。詳細設計では,サブシステムを構成する全てのプログラムの画面項目や処理内容の詳細仕様を決定し,最後にレビューを行う。詳細設計,プログラム作成・テスト,結合テストは,サブシステムごとに行い,サブシステム同士は同時並行に開発を行うことができる。全てのサブシステムの結合テストが完了すると,システム結合テストを開始する。
Y君は,必要なアクティビティ,順序と所要期間を,表1のアクティビティリストにまとめた。 各サブシステムの作業は,表2のサブシステム作業要員リストに基づいて行う。 Y君は,表1を基に,図1のプロジェクトスケジュールネットワーク図を作成した。 アクティビティの最早開始日,最早終了日,最遅開始日,最遅終了日はプロジェクトの開始日を1日目とした日数で表し,休日は考慮しない。最早終了日と最遅終了日の差は余裕日数である。プロジェクトの完了予定日は,開始から185日目となった。
〔プロジェクト期間短縮の検討〕
Y君がプロジェクトの完了予定日を上司に報告したところ,多少コストが増えても構わないから,期間短縮を検討するよう指示された。そこでY君は,期間短縮策として,次の二つの方式を検討した。
Y君が部内の要員の作業計画を立案していたところ,上司から,R君をより優先度が高い別のプロジェクトに従事させたいので,期間短縮はできなくてもよいから,R君が担当する予定だった作業をQ君に担当させられないか,再検討するよう指示された。そこでY君は,R君と同等の能力をもつQ君が予算集計と承認ワークフローの作業を当初予定の所要期間で順次行うことにし,図1のプロジェクトスケジュールネットワーク図を見直した。見直し後のプロジェクトスケジュールネットワーク図を,図2に示す。
文具類の販売を行うZ社では,販売予算システムを開発することになった。販売予算システムは,予算登録,予算集計,承認ワークフローの三つのサブシステムから構成される。システム部のY君が,プロジェクトマネージャに任命され,スケジュールを立案することになった。
〔アクティビティリストとプロジェクトスケジュールネットワーク図の作成〕
プロジェクトでは,販売予算システム全体を対象に基本設計を行った後,各サブシステムの詳細設計を開始する。詳細設計では,サブシステムを構成する全てのプログラムの画面項目や処理内容の詳細仕様を決定し,最後にレビューを行う。詳細設計,プログラム作成・テスト,結合テストは,サブシステムごとに行い,サブシステム同士は同時並行に開発を行うことができる。全てのサブシステムの結合テストが完了すると,システム結合テストを開始する。
Y君は,必要なアクティビティ,順序と所要期間を,表1のアクティビティリストにまとめた。 各サブシステムの作業は,表2のサブシステム作業要員リストに基づいて行う。 Y君は,表1を基に,図1のプロジェクトスケジュールネットワーク図を作成した。 アクティビティの最早開始日,最早終了日,最遅開始日,最遅終了日はプロジェクトの開始日を1日目とした日数で表し,休日は考慮しない。最早終了日と最遅終了日の差は余裕日数である。プロジェクトの完了予定日は,開始から185日目となった。
〔プロジェクト期間短縮の検討〕
Y君がプロジェクトの完了予定日を上司に報告したところ,多少コストが増えても構わないから,期間短縮を検討するよう指示された。そこでY君は,期間短縮策として,次の二つの方式を検討した。
- 方式1:
- 他のプログラムと独立した機能については,サブシステムを構成する個々のプログラムの詳細設計を完了する都度,最後のレビューを待たずに,逐次プログラム作成・テストに着手する。詳細設計とプログラム作成・テストを並行して行うことによって期間を短縮する。予算登録サブシステムでは,設計者とプログラマの日程調整を行えば,この方式で,プログラム作成・テストの開始を20日間早められることが分かった。以後,表1の所要期間のままで,予算登録サブシステムのプログラム作成・テスト完了までの期間を20日間短縮できる。
予算集計と承認ワークフローの各サブシステムについては,開発体制などの理由によって,この方式での期間の短縮はできないことが分かった。 - 方式2:
- プログラム作成・テストにプログラマを追加投入することによって,期間を短縮する。Y君は,各サブシステムの所要期間の短縮と必要なコストを検討し,表3のプログラム作成・テストの期間短縮策の候補一覧を作成した。表3の番号①~③の期間短縮策の候補は,複数を同時に実施することができる。ただし,それぞれは1回ずつしか実施できない。
Y君が部内の要員の作業計画を立案していたところ,上司から,R君をより優先度が高い別のプロジェクトに従事させたいので,期間短縮はできなくてもよいから,R君が担当する予定だった作業をQ君に担当させられないか,再検討するよう指示された。そこでY君は,R君と同等の能力をもつQ君が予算集計と承認ワークフローの作業を当初予定の所要期間で順次行うことにし,図1のプロジェクトスケジュールネットワーク図を見直した。見直し後のプロジェクトスケジュールネットワーク図を,図2に示す。
設問1
図1において,クリティカルパスを構成する一連のアクティビティは何か。一連のアクティビティの記号を,順序に従って,","で区切って全て答えよ。
解答入力欄
- o:
解答例・解答の要点
- o:A,B1,B2,B3,E
解説
クリティカルパスとは、プロジェクトを最短で完了するために遅延することが許されない一連の作業(アクティビティ)を繋いだ経路のことです。このクリティカルパスを短縮しない限り、他の工程を短縮してもプロジェクト期間を短縮できないので、通常、プロジェクトマネジメントでは「クリティカルパス上の作業をいかに短縮するか」が重要となってきます。
クリティカルパスはプロジェクトの全工程を作業順に並べた時に最長期間となる経路です。表1と図1で各経路の日数を確認すると、
また、クリティカルパスは余裕日数のない作業を繋げたものなので、図1のプレシデンスダイアグラムでアクティビティの上の数字と下の数字が一致しているものを結べば、計算をせずとも「A,B1,B2,B3,E」とわかります。∴A,B1,B2,B3,E
クリティカルパスはプロジェクトの全工程を作業順に並べた時に最長期間となる経路です。表1と図1で各経路の日数を確認すると、
- A,B1,B2,B3,E
- 75日+30日+30日+20日+30日=185日
- A,C1,C2,C3,E
- 75日+25日+25日+20日+30日=175日
- A,D1,D2,D3,E
- 75日+15日+15日+10日+30日=145日
また、クリティカルパスは余裕日数のない作業を繋げたものなので、図1のプレシデンスダイアグラムでアクティビティの上の数字と下の数字が一致しているものを結べば、計算をせずとも「A,B1,B2,B3,E」とわかります。∴A,B1,B2,B3,E
設問2
Y君の考えた期間短縮策について,図1を基に(1)~(3)に答えよ。
- 方式1及び方式2それぞれの所要期間短縮方法の名称を解答群の中から選び,記号で答えよ。また,各方式によって,プロジェクトの完了予定日は,最短で開始から何日目にすることが可能かを答えよ。
- 表3のプログラム作成・テストの期間短縮策の候補の中で,単独で実施しても,他の候補と組み合わせて実施しても,プロジェクト期間の短縮に貢献しないものはどれか。①~③の番号で答えよ。
- 方式2において,プロジェクト全体の期間を最大限短縮するために最低限必要な追加コストは何万円か。
解答群
- クラッシング
- シミュレーション
- ファストトラッキング
- 平準化
- リードタイム
解答入力欄
- 方式1-名称:
- 方式1-完了予定日:日目
- 方式2-名称:
- 方式2-完了予定日:日目
- 万円
解答例・解答の要点
- 方式1-名称:ウ
- 方式1-完了予定日:175
- 方式2-名称:ア
- 方式2-完了予定日:170
- ③
- 300
解説
- プロジェクトの所要期間短縮を図る方法は次の2つに大別されます。
- クラッシング
- メンバーの時間外勤務を増やしたり、業務内容に精通したメンバーを新たに増員したりするなど、クリティカルパス上のアクティビティに資源を追加投入して短縮を図る。
- ファストトラッキング
- 全体の設計が完了する前に、仕様が固まっているモジュールの開発を開始するなど、当初の計画では順番に行う予定だったアクティビティを並行して行うことによって短縮を図る。
本文中に「詳細設計とプログラム作成・テストを並行して行うことによって期間を短縮する」と記述されていることから「ファストトラッキング」であるとわかります。
短縮日数については「表1の所要期間のままで,予算登録サブシステムのプログラム作成・テスト完了までの期間を20日間短縮できる」ので、クリティカルパス上の作業B2の完了が20日早まり、パス「A,B1,B2,B3,E」の所要日数は「185日目→165日目」に短縮されます。しかし単純にプロジェクト全体の所要日数が20日短縮されるわけではありません。設問1で検証した通り、プロジェクトには所要日数175日の「A,C1,C2,C3,E」が存在しているため、クリティカルパスはより所要日数の多い「A,C1,C2,C3,E」に変わることになります。
したがって、方式1の期間短縮案を適用した場合、クリティカルパスは「A,C1,C2,C3,E」、プロジェクトの完了予定日は「175日目」になります。
∴名称:ウ:ファストトラッキング
完了予定日:175
〔方式2について〕
本文中に「プログラム作成・テストにプログラマを追加投入することによって,期間を短縮する」と記述されていることから「クラッシング」であるとわかります。
短縮日数については表3の①~③すべてを適用すると、3つのパスの所要日数は次のように短縮されます。- A,B1,B2,B3,E
- 185日-15日=170日
- A,C1,C2,C3,E
- 175日-10日=165日
- A,D1,D2,D3,E
- 145日-5日=140日
∴名称:ア:クラッシング
完了予定日:170 - プロジェクト全体の完了予定日を早めるにはクリティカルパス上の作業を短縮しなければなりません。パス「A,D1,D2,D3,E」の所要日数は145日ですから、他のパスの所要日数がこれよりも多い間は、D1,D2,D3に短縮策を講じてもスケジュール上のメリットはありません。よって、単独で実施しても、他の候補と組み合わせて実施しても、プロジェクト期間の短縮に貢献しないのはD2に対する短縮策である③です。①は単独で貢献する短縮策、②は①との組み合わせで貢献する短縮ですが、③は単独でも他と組み合わせた場合でもプロジェクト短縮に貢献しません。
∴③ - (2)の説明の通り、①及び②の短縮案を実施することでプロジェクトの完了予定日を最大限短縮することができます(③は無駄)。表3より、①の実施には200万円、②の実施には100万の追加コストが必要とわかるので、最低限必要な追加コストは「200万円+100万円=300万円」です。
∴300
設問3
図2中のa~dに入れる適切な数値を答えよ。
解答入力欄
- a:
- b:
- c:
- d:
解答例・解答の要点
- a:101
- b:115
- c:111
- d:125
解説
最初に4つの数字の意味を確認しておきましょう。
〔a,bについて〕
D1を最も早く開始できる日は、先行作業がすべて完了した日の翌日です。D1の先行作業はAとC1であり、それぞれの最早終了日(EF)はA:75日、C1:100日なので、D1はC1終了日の翌日である101日目から開始可能となります。よって[a]には「101」が入ります。
最早開始日である101日目から開始し、そのままD1(所要日数15日)の終わりまで作業を実施したときに最も早い終了となります。よって、D1の最早終了日は「115日目」になります。
∴a=101
b=115
〔c,dについて〕
後続作業との関係から導きます。D1の後続作業はC3とD2であり、それぞれの最遅開始日(LS)がC3:126日、D3:131日になっています。後続作業の最遅開始日に遅れないようにするには、D1を最低でも125日目までに終了させておかなくてはなりません。よって、D1の最遅終了日(LF)は「125日目」になります。そして、最遅終了日までに作業を完了させるためには、少なくともそれより15日前の111日目には作業を開始しなくてはなりません。よって、D1の最遅開始日(LS)は「111日目」になります。
∴c=111
d=125
- 最早開始日(左上)
- 先行作業との関係を踏まえ、その作業を最も早く開始できる日
- 最早終了日(右上)
- 先行作業との関係を踏まえ、その作業を最も早く完了できる日
- 最遅開始日(左下)
- プロジェクト全体の総所要日数に影響を与えない範囲で、その作業を最も遅く開始できる日
- 最遅終了日(右上)
- プロジェクト全体の総所要日数に影響を与えない範囲で、その作業を最も遅く完了できる日
〔a,bについて〕
D1を最も早く開始できる日は、先行作業がすべて完了した日の翌日です。D1の先行作業はAとC1であり、それぞれの最早終了日(EF)はA:75日、C1:100日なので、D1はC1終了日の翌日である101日目から開始可能となります。よって[a]には「101」が入ります。
最早開始日である101日目から開始し、そのままD1(所要日数15日)の終わりまで作業を実施したときに最も早い終了となります。よって、D1の最早終了日は「115日目」になります。
∴a=101
b=115
〔c,dについて〕
後続作業との関係から導きます。D1の後続作業はC3とD2であり、それぞれの最遅開始日(LS)がC3:126日、D3:131日になっています。後続作業の最遅開始日に遅れないようにするには、D1を最低でも125日目までに終了させておかなくてはなりません。よって、D1の最遅終了日(LF)は「125日目」になります。そして、最遅終了日までに作業を完了させるためには、少なくともそれより15日前の111日目には作業を開始しなくてはなりません。よって、D1の最遅開始日(LS)は「111日目」になります。
∴c=111
d=125