応用情報技術者過去問題 平成25年春期 午後問10
⇄問題文と設問を画面2分割で開く⇱問題PDF問10 プロジェクトマネジメント
EVM(Earned Value Management)を用いたプロジェクト管理に関する次の記述を読んで,設問1~4に答えよ。
システムインテグレータのP社は,機械製造業Q社から,Q社工場の生産管理システム開発プロジェクト(以下,本プロジェクトという)を受注した。本プロジェクトのプロジェクトマネージャにP社のR氏が任命された。
〔EVMを用いた進捗管理〕
P社は,計画したスケジュールやコストどおりにプロジェクトを進めるために,要件定義以降のフェーズにおけるプロジェクトの進捗管理にEVMを採用することを社内ルールで定めている。
R氏は,本プロジェクトのWBSを作成した。EVMを用いたプロジェクト管理には,精度の高いWBSを作成することが重要である。またWBSでは各タスクのa関係が分かりにくいので,アローダイアグラムも作成した。
P社では,プロジェクト全体のSPI(Schedule Performance Index:スケジュール効率指数)とCPI(Cost Performance Index:コスト効率指数)を週次で求めて進捗を管理する。SPI又はCPIが0.90を下回ったとき,プロジェクトに何か問題が生じていると判断して,原因の調査及び対策の検討に着手することを社内ルールで定めている。
表1は,基本設計フェーズ開始後4週間の本プロジェクト全体のEVM表である。 基本設計フェーズは,業務ロジックチーム,データベースチーム,ユーザインタフェースチームの三つに分かれて作業を進めている。
〔各チームへのヒアリング〕
図1は,基本設計フェーズ,開始後4週間の各チームのEVMグラフである。4月26日時点の図1の状況について各チームのチームリーダーにヒアリングした結果は次のとおりであった。
ヒアリングの結果,設計の未承認や要員の確保不十分を原因とするプロジェクト推進上の問題が発生していることが分かった。
ユーザインタフェースチームの設計承認について,レビューで十分な理解を得るために,fを早急に作成し,設計書と合わせて説明するよう,R氏はユーザインタフェースチームに指示した。
R氏は,業務ロジックチームの遅れをばん回し,予定完了日までに設計を完了させるために,必要な要員の確保を最優先で行うことにした。その際,①新規メンバーの投入が既存メンバーの生産性に影響を及ぼすことを考慮し,既存メンバーの効率を維持するための配慮も併せて行った。
システムインテグレータのP社は,機械製造業Q社から,Q社工場の生産管理システム開発プロジェクト(以下,本プロジェクトという)を受注した。本プロジェクトのプロジェクトマネージャにP社のR氏が任命された。
〔EVMを用いた進捗管理〕
P社は,計画したスケジュールやコストどおりにプロジェクトを進めるために,要件定義以降のフェーズにおけるプロジェクトの進捗管理にEVMを採用することを社内ルールで定めている。
R氏は,本プロジェクトのWBSを作成した。EVMを用いたプロジェクト管理には,精度の高いWBSを作成することが重要である。またWBSでは各タスクのa関係が分かりにくいので,アローダイアグラムも作成した。
P社では,プロジェクト全体のSPI(Schedule Performance Index:スケジュール効率指数)とCPI(Cost Performance Index:コスト効率指数)を週次で求めて進捗を管理する。SPI又はCPIが0.90を下回ったとき,プロジェクトに何か問題が生じていると判断して,原因の調査及び対策の検討に着手することを社内ルールで定めている。
表1は,基本設計フェーズ開始後4週間の本プロジェクト全体のEVM表である。 基本設計フェーズは,業務ロジックチーム,データベースチーム,ユーザインタフェースチームの三つに分かれて作業を進めている。
〔各チームへのヒアリング〕
図1は,基本設計フェーズ,開始後4週間の各チームのEVMグラフである。4月26日時点の図1の状況について各チームのチームリーダーにヒアリングした結果は次のとおりであった。
- 業務ロジックチーム:
- Webシステム開発要員の確保が不十分なので,計画よりも少ない要員で設計を進めており,スケジュールは遅れている。生産性はe。
- データベースチーム:
- データベースの設計を順調に進めている。スキルの高い要員が割り当てられていることと,既存の設計書をかなり活用できているので,スケジュールは進んでいる。生産性は当初の想定よりも高い。
- ユーザインタフェースチーム:
- 設計を終え,利用者にレビューを依頼しているが,多忙な上,設計書を用いた紙面の説明だけでは見た目や操作性の十分な理解が進まず,いまだに利用者の合意が得られていない。設計の承認が得られないので,予定どおりに配置している要員が待ち状態となっており,スケジュールは遅れている。
ヒアリングの結果,設計の未承認や要員の確保不十分を原因とするプロジェクト推進上の問題が発生していることが分かった。
ユーザインタフェースチームの設計承認について,レビューで十分な理解を得るために,fを早急に作成し,設計書と合わせて説明するよう,R氏はユーザインタフェースチームに指示した。
R氏は,業務ロジックチームの遅れをばん回し,予定完了日までに設計を完了させるために,必要な要員の確保を最優先で行うことにした。その際,①新規メンバーの投入が既存メンバーの生産性に影響を及ぼすことを考慮し,既存メンバーの効率を維持するための配慮も併せて行った。
設問1
本文中のaに入れる適切な字句を5字以内で答えよ。
解答入力欄
- a:
解答例・解答の要点
- a:先行後続 (4文字)
解説
〔aについて〕
WBSではわかりにくく、アローダイアグラムを作成することでわかる関係が入ります。
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト目標を達成し、必要な成果物を過不足なく作成するために、プロジェクトチームが実行すべき作業を、成果物を主体に階層的に要素分解したものです。WBSは作業の階層構造を把握するのに適していますが、プロジェクトに必要な作業を漏れなく列挙することが主目的なので作業間の順序関係は表現できません。一方、アローダイアグラムは、プロジェクトで実施する作業同士の先後関係を視覚的に表現するネットワーク図ですので、プロジェクトのスケジュール管理に適しています。模範解答の「先行後続」が最良ですが、「前後」や「先後」あるいは「依存」「順序」でも問題ないと思います。
∴a=先行後続
WBSではわかりにくく、アローダイアグラムを作成することでわかる関係が入ります。
WBS(Work Breakdown Structure)は、プロジェクト目標を達成し、必要な成果物を過不足なく作成するために、プロジェクトチームが実行すべき作業を、成果物を主体に階層的に要素分解したものです。WBSは作業の階層構造を把握するのに適していますが、プロジェクトに必要な作業を漏れなく列挙することが主目的なので作業間の順序関係は表現できません。一方、アローダイアグラムは、プロジェクトで実施する作業同士の先後関係を視覚的に表現するネットワーク図ですので、プロジェクトのスケジュール管理に適しています。模範解答の「先行後続」が最良ですが、「前後」や「先後」あるいは「依存」「順序」でも問題ないと思います。
∴a=先行後続
設問2
表1について,(1)~(3)に答えよ。
- 4月26日時点の進捗状況について,スケジュールは,進み,遅れ又は予定どおりのいずれであったかを○印で囲み,その大きさが何千円であったか答えよ。
なお,予定どおりの場合,大きさは0千円と答えよ。 - 4月26日時点の進捗状況について,コストは,超過,削減又は予定どおりのいずれであったかを○印で囲み,その大きさが何千円であったか答えよ。
なお,予定どおりの場合,大きさは0千円と答えよ。 - R氏が社内ルールに従い,原因の調査及び対策の検討に着手した最初のポイントは4月何日であったと考えられるか答えよ。また,その根拠となる指数を一つ○印で囲み,その値を小数第3位を四捨五入して小数第2位まで求めよ。
スケジュール に関する解答群
- 進み
- 遅れ
- 予定どおり
コスト に関する解答群
- 超過
- 削減
- 予定どおり
指数 に関する解答群
- SPI
- CPI
解答入力欄
- スケジュール:
- 大きさ:
- コスト:
- 大きさ:
- 4月:
- 指数:
- 値:
解答例・解答の要点
- スケジュール:イ
- 大きさ:3,600千円
- コスト:ア
- 大きさ:1,600千円
- 4月:12日
- 指数:ア
- 値:0.89
解説
EVM(Earned Value Management)は、プロジェクトにおける作業を金銭の価値に置き換えて定量的に実績管理をする進捗管理手法で、PV,EV,ACという3つの指標を用いることが特徴です。
- PV(Planned Value)
- プロジェクト開始当初、現時点までに計画されていた作業に対する予算
- EV(Earned Value)
- 現時点までに完了した作業に割り当てられていた予算
- AC(Actual Cost)
- 現時点までに完了した作業に対して実際に投入した総コスト
- 表1を見ると、4月26日時点のEVは10,400、PVは14,000です。「10,400-14,000=▲3,600」なので、スケジュールは進捗遅れ、その大きさは3,600千円が適切です。
∴遅れ、3,600千円 - 表1を見ると、4月26日時点のEVは10,400、ACは12,000です。「10,400-12,000=▲1,600」なので、コストは超過、その大きさは1,600千円が適切です。
∴超過、1,600千円 - P社の社内ルールでは、「SPI又はCPIが0.90を下回ったとき,プロジェクトに何か問題が生じていると判断して,原因の調査及び対策の検討に着手する」としています。
SPI(スケジュール効率指数)とCPI(コスト効率指数)は、プロジェクトのある時点での計画値と実績値との差異を測る指標で次の式で求めます。- SPI=EV/PV
- 1.0より大きければスケジュール進み、1.0ちょうどで計画通り、1.0より小さければスケジュール遅延を意味します。
- CPI=EV/AC
- 1.0より大きければ実コストが計画より削減、1.0ちょうどで計画通り、1.0より小さければコスト超過を意味します。
∴12日、SPI、0.89
※試験本番では全部の指標を求める必要はありません。「EV-PV」または「EV-AC」がマイナス値になる場所に目を付けて、初週から順に計算していけば最少限の計算で答えを導けます。
設問3
〔各チームへのヒアリング〕について,(1),(2)に答えよ。
- 図1中のb~dに入れる適切なチーム名を解答群の中から選び,記号で答えよ。
- 本文中のeに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。また,そのように考えた理由を,適切な指標を用いて15字以内で述べよ。
b,c,d に関する解答群
- 業務ロジック
- データベース
- ユーザインタフェース
e に関する解答群
- 当初の想定どおりである
- 当初の想定よりも高い
- 当初の想定よりも低い
解答入力欄
- b:
- c:
- d:
- e:
- 理由:
解答例・解答の要点
- b:ウ
- c:ア
- d:イ
- e:ア
- 理由:EVとACが等しいから (11文字)
解説
- まずスケジュール面から考えます。
EVMを用いた進捗管理では、スケジュール遅れならば「EV-PV」はマイナス、スケジュール進みならば「EV-PV」はプラスになります。EVMグラフを見ると、EV>PVとなっているのは[d]チーム、EV<PVとなっているのは[b]及び[c]チームであるとわかります。
ヒアリングした結果には、業務ロジックチーム及びユーザインタフェースチームはスケジュール遅れ、データベースチームはスケジュール進みと記載されているので、唯一、EV>PVである[d]はデータベースチームのEVMグラフであると判断できます。
残る2チームの違いですが、[b]のグラフでEVの増加がストップしてしまっていることに注目します。ヒアリングした結果には、ユーザインタフェースチームで設計承認を得られず、要員が待ち状態になっている状態が記載されています。要員が待ち状態になると実コスト(AC)は増加していく一方、作業が進まないのでEVは増加しません。よって、[b]がユーザインタフェースチーム、[c]が業務ロジックチームであると判断できます。
∴b=ウ:ユーザインタフェース
c=ア:業務ロジック
d=イ:データベース - [c]のグラフを見るとEVとACが一致しているので、全期間を通じてコストは想定どおりとなっています。生産性は「完成工数÷投入コスト」で求めますから、当初計画の生産性は「完成工数÷EV」、実際の生産性は「完成工数÷AC」で求められます。EVとACが等しいということは、当初計画の生産性と実際の生産性は同じであるということです。
∴ア:当初の想定どおりである
理由:EVとACが等しいから
設問4
〔対策の検討〕について,〔1),(2)に答えよ。
- 本文中のfに入れる適切な字句を10字以内で答えよ。
- 本文中の下線①が示す内容について,35字以内で述べよ。
解答入力欄
- f:
- o:
解答例・解答の要点
- f:プロトタイプ (6文字)
- o:既存メンバーの工数が新規メンバーの教育に割り振られる (26文字)
解説
- 〔fについて〕
ユーザインタフェースチームでは、設計書を用いた紙面の説明だけでは見た目や操作性の十分な理解が進まず、利用者からの合意を得られていません。[f]は、設計書と合わせて利用者への説明に使用されるもので、レビューで利用者の十分な理解を得るために作成されるものです。
プロトタイプは、開発の初期段階で利用者の要求を理解するために作成する簡易なソフトウェアです。プロトタイプで実際に動作する姿を見せることで、利用者に完成品のイメージを早期に理解させることができます。本問では、見た目や操作性の理解が得られていないのでプロトタイプの作成が有効な対策となります。
∴f=プロトタイプ - 途中からチームに加わる新規メンバーは、プロジェクトやチームについての情報が不足していることがあります。チームとして開発を進める上では、知識や経験の共有、コンフリクトの解決、必要な技術の教育などが必要となるので、既存メンバーが新規メンバーとの情報共有や教育に時間を取られ、以前と同じ生産性を維持できないリスクがあります。要員の追加は必ずしも良い結果をもたらすとは限らず、リスクやコストの増加を招く可能性があるので、期待した効果が得られるように十分な配慮が必要です。
本問では、既存メンバーの生産性が悪化する理由が問われているので「既存メンバーの工数が新規メンバーの教育に割り振られる」が適切な答えとなります。
∴既存メンバーの工数が新規メンバーの教育に割り振られる