応用情報技術者過去問題 平成22年春期 午後問11

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問11 サービスマネジメント

サービスサポート業務のインシデント管理における作業プロセスの改善に関する次の記述を読んで,設問1~3に答えよ。

〔R社のサービスサポートの概要〕
 機械製造業のR社では,システムの開発と改修はシステム開発課が行い,システムの運用管理はシステム運用課が行っている。システム運用課は,総責任者のS課長の下に,運用責任者のT主任,問合せ窓口のU君がいる。
 利用者からの問合せは,U君が電子メールか電話で受け付けている。
 これまでは,障害が発生すると図1の1件1葉の障害記録票を作成していた。同一の障害に関するものと思われる問合せは1件の障害記録票にまとめ,都度の問合せ記録の作成は省略できる運用ルールになっている。
 しかし,障害記録票が増えて過去の記録との照合が大変になってきたので,図2の一覧形式の問合せ管理簿を作成し,問合せ記録を管理することにした。同時に,調査後に更に対応が必要なものについてだけ,障害記録票を作成するように運用ルールを変更した。問合せ状況は,毎日,T主任が問合せ管理簿で確認することにした。
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〔発生した問題1〕
 運用を開始して約1か月が経過したある日,営業部担当者の入力ミスで,誤って旧製品を出荷し,顧客に指摘されて返品されるという問題が発生した。
 問題の収拾に当たった営業部担当者は,顧客に謝罪と経緯の説明を行い,当日中に納品することを約束し,納品も完了した。この問題への対応に当たって,システム運用課では,入力ミスによる処理の回復作業を行い,正しい出荷伝票の再出力を行った。
 後日,顧客から再発防止策の提示を求められた営業部長は,この問題について報告を受けていなかったのでシステム運用課のS課長のところに確認に訪れた。
 S課長は誤った出荷を行った問題について,障害記録票を調査し,入力ミスによる処理の回復作業の実施,入力データのチェック機能強化の改修と操作マニュアルの改訂が記載されていることを確認した。S課長は更に,営業部長にこの問題が報告されていなかった原因を分析し,発生した問題について,運用担当者からも関係者に直接報告することや,関係者との情報共有が必要であると結論付けた。
 そこで,問題の再発を防止するために,障害記録票に必要な項目を追加し,運用ルールに次の手順に則ったaルールを追加した。
  1. 問題発生時にbを調査し,調達先・営業部・顧客など具体的に記入する。
  2. 金額・信用・品質などの区分ごとにcを評価し,数値化して記入する。
  3. 問題のbcに応じて関係部門のdの職位の管理者まで速やかに報告し,判断を仰ぐ。
〔発生した問題2〕
 その翌週,営業1課から,端末が応答しなくなったとの連絡が入った。U君はネットワーク業者に連絡して調査を依頼した結果,営業部に設置しているハブが故障しており,交換が必要なことが判明したので,業者にハブの交換作業を依頼した。その直後,営業2課の利用者から「出荷指示の入力操作ができない」との電話連絡があった。U君は,「調査して折り返し結果を知らせる」と答えて電話を置き,営業1課の障害と同ーの原因であるかどうか見極めてから問合せ管理簿に記入することにして,すぐに調査に着手した。
 U君が調査のためにネットワーク業者に電話で照会しているところに,先ほどの営業2課の利用者から再度電話があり,T主任が対応した。営業2課の利用者は「先ほどの件で,出荷指示の入力操作ができないのでお客様に待ってもらっている。早急に回復のめどを知りたい」と尋ねた。T主任は問合せ管理簿を確認したところ,最新の問合せの記録は現在対応中の営業1課のネットワーク障害であったので,①同一の障害であると判断し,「ネットワークに障害が発生している。現在,故障したハブの交換作業中で,もうすぐ回復する」と答えた。
 U君は,ネットワーク業者からの回答によって,営業2課は故障したハブの影響を受けないことを確認した。原因は前日にリリースした出荷指示のプログラムであると見当をつけて,システム開発課に確認を取り,問合せ管理簿の記入と障害管理票の作成を行った。そして,少なくとも本日中には回復できないことを営業2課の利用者に連絡したところ,「さっき,T主任からもうすぐ回復すると聞いたので,まだ顧客に待ってもらっている。時間がかかると分かっていたらすぐに手作業で処理したのに。今からでは出荷が間に合わない」ときつく言われた。
 2日後に営業2課から連絡があり,U君が不在であったのでT主任が対応した。「先日障害があった出荷指示入力機能は,早ければ翌日には使用可能になると聞いていたが,今日になっても使用できず,連絡もない。どうなっているのだ」という問合せがあった。調べてみると,システム開発課での改修作業に時間がかかっていることが判明した。T主任は,毎日,問合せ管理簿を確認していたが,この件は概要が簡単に書かれているだけで,②調査は終了していたので,既にクローズしていると思っていた。対応に必要な③改修が遅れていることには全く気が付いていなかった

設問1

本文中のadに入れる適切な字句を解答群の中から選び,記号で答えよ。
a,b,c,d に関する解答群
  • 運用
  • 影響範囲
  • エスカレーション
  • 下位
  • 協議
  • 重要度
  • 上位
  • 他部門
  • 利便

解答入力欄

  • a:
  • b:
  • c:
  • d:

解答例・解答の要点

  • a:
  • b:
  • c:
  • d:

解説

aについて〕
空欄を含む一文を確認すると、「問題の再発を防止するために,障害記録票に必要な項目を追加し,運用ルールに次の手順に則ったaルールを追加した」と記載があります。
○○ルールという文脈より、解答群のうち当てはまりそうなのは「ア:運用」「ウ:エスカレーション」「オ:協議」の3つです。このうち「ア」は、「運用ルールに次の手順に則った"ア:運用"ルール」では文章的におかしいので除外できます。

〔発生した問題1〕の4段落目に「関係者との情報共有が必要であると結論付けた」と記載があり、関係者間での情報共有不足が今回の問題の発生原因でした。そして①~③を確認すると、①の問題発生時の調査、②の評価、③で管理職へ報告して判断を仰ぐという、事象を上位の階層に委ねるルールが記載されています。このように、重大なインシデントが発生したときに上位の部門に情報提供することを「(階層的)エスカレーション」といいます。したがって、[a]には「エスカレーション」が当てはまります。

a=ウ:エスカレーション

bについて〕
文脈より、空欄に当てはまりそうなのは「イ:影響範囲」「カ:重要度」「ケ:利害関係」の3つです。
問題が発生したら、まずその問題を分類し、問題がもたらすビジネスへの影響と範囲(インパクト)を特定します。影響範囲を特定しないと、その問題の重要度がわからなくなり、優先順位をつけることができません。したがって、[b]には「影響範囲」が当てはまります。

b=イ:影響範囲

cについて〕
発生した問題には、様々なパターンがあります。発生した順に対応した場合、緊急で対応すべき問題が後回しにされてしまう可能性があります。そこで問題に対して緊急度や優先度などの、重要度を評価する必要があります。したがって、[c]には「重要度」が当てはまります。

c=カ:重要度

dについて〕
選択肢を確認すると、空欄に当てはまりそうなのは「エ:下位」または「キ:上位」です。
顧客に迷惑を掛けた重大な問題であったにもかかわらず、その情報が営業部長まで伝わっていなかったことが課題となっています。営業部長まで情報を伝達するには、関係部門の「上位」の管理者まで報告するルールにしなければなりません。

d=キ:上位

設問2

T主任が下線①の誤った判断をした原因について,(1),(2)に答えよ。
  • 直接の原因となった,問合せ管理簿に欠落していた情報を答えよ。
  • 誤った判断をする原因となった,運用ルールの問題点を25字以内で答えよ。

解答入力欄

解答例・解答の要点

    • ・営業2課の問合せに対する調査中の情報
      ・営業2課の問合せの状態
    • 同一と思われる問合せは記録を省略できる (19文字)
  • 解説

    • 誤った判断をした原因は、U君が問合せ管理簿に記載していなかったことです。〔発生した問題2〕の一段落目に、「営業1課の障害と同ーの原因であるかどうか見極めてから問合せ管理簿に記入」と記載があります。これよりU君は、営業2課からの問合せを、すぐに問合せ管理簿へ記載していなかったことがわかります。その間に、営業2課から2回目の問合せがありました。この時対応したのはU君ではなく、T主任であり、1回目の問合せがあったことを把握していません。そこで、最新の問合せ記録の「現在対応中の営業1課のネットワーク障害」という情報をもとに、誤った対応してしまいました。営業2課からの問合せについて記録があれば、このような思い違いは発生しなかったわけですから、問合せ管理簿に欠落していた情報の解答例は「営業2課からの問合せ記録」となります。

      ∴・営業2課の問合せに対する調査中の情報
       ・営業2課の問合せの状態

    • 〔R社のサービスサポートの概要〕の3段落目に「同一の障害に関するものと思われる問合せは1件の障害記録票にまとめ,都度の問合せ記録の作成は省略できる」と記載があります。今回発生した問題は、U君が問合せ管理簿に都度記載していなかったことが原因です。すぐに問合せ管理簿に記載しなかった理由は、営業1課の障害と同一の原因であるか調査していたからです。同一の問合せであれば、管理簿の記載をせず省略しようとしたため今回の事象が発生してしまいました。また、T主任が問合せ管理簿を見て同一の障害だと思い違いをしてしまったのも、この運用ルールが頭にあったからです。

      したがって、「同一の障害と思われる問合せの記録を省略できる」という運用ルールが誤りの原因であったと言えます。

      ∴同一と思われる問合せは記録を省略できる

    設問3

    問合せ管理簿について,(1),(2)に答えよ。
    • T主任が下線②のように思った原因のうち,問合せ管理簿に起因するものを20字以内で答えよ。
    • 下線③のような事態が再発することを防止するために,問合せ管理簿に追加すべき管理項目を,障害記録票の項目名で答えよ。

    解答入力欄

    解答例・解答の要点

    • 改修の要否を記録する欄がないから (16文字)
    • 改修完了予定日
  • 解説

    • 問合せ管理簿には、調査終了日と改修完了日の項目があります。しかし、調査終了後に改修に着手する予定または改修中である場合、問合せ管理簿から情報を読み取ることができません。T主任は調査終了日の項目が埋まっていたため、調査終了=クローズと誤解したのです。
      障害管理票の項目を参考にすると、改修要否の項目があればクローズしていないことがわかるようになると判断できます。

      ∴改修の要否を記録する欄がないから

    • 翌日の予定が翌々日になってしまった原因は、当初見積もっていた改修作業に時間がかかったことです。この件を情報共有するために、問合せ管理簿へ改修がいつ完了するかを記載する必要があります。T主任は問合せ管理簿を毎日確認していますから、改修完了予定日が過ぎているにもかかわらず改修完了日が入力されていないレコードがあれば、改修作業に問題が発生していることに気付くことができます。

      ∴改修完了予定日
    問11成績

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